令和3年度介護報酬改定でBCP策定が義務化!策定ポイントを解説

「令和3年度介護報酬改定」では、介護事業者にBCP策定が義務化となりました。一方で、BCP策定義務化と言われても、具体的に何をすればいいのかわからない介護事業者も多いでしょう。

そこで、この記事では、令和3年度介護報酬改定のBCP策定義務化について紹介します。また、策定ポイントなども紹介しているので、介護事業所や介護施設職員の方はぜひ、ご参考にしてください。

「令和3年度介護報酬改定」でBCP策定が義務化

介護事業者のBCP策定については、厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」のなかで、以下のように記載されています。

業務継続に向けた取組の強化(※3年の経過措置期間を設ける)

感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。

厚生労働省「令和3年度介護報酬改定の主な事項について

上記の「業務継続に向けた計画等の策定」が、BCPに該当します。

BCP(業務継続計画)とは、台風や地震などの災害、新型コロナウイルス感染症の蔓延等などの不足の事態が発生しても重要な事業を中断させず、また中断しても早期に復旧するための方針です。

またBCP策定のほかにも、すべての介護事業所を対象に、BCPに関わる研修や訓練などの実施を義務づけています。

3年間の経過措置期間が設けられている

令和3年4月1日施行の「令和3年度介護報酬改定」でBCP策定が義務化されたものの、現状では3年間の猶予が与えられています。そのためBCP策定は、今すぐに対応が必要なわけではありません。

しかし、介護サービスは利用者によっては生活に欠かせないため、感染症や自然災害が発生した場合であっても継続してサービスが提供される必要があります。

そのため経過措置期間は設けられていますが、有事でも円滑に業務を継続するためにも、介護報酬の有無にかかわらずBCP策定を行いましょう。

介護施設では2種類のBCP策定が必要

一口にBCPと言っても、介護事業者には以下の2種類の対策が求められています。

  • 新型コロナウイルス感染症BCP
  • 自然災害BCP

つまり、介護事業者は「新型コロナウイルス」と「自然災害」のそれぞれに対し、BCPを策定することが求められています。そこで、上記2つのおもな策定内容を見ていきましょう。

新型コロナウイルス感染症BCP

新型コロナウイルス感染症BCPとは、介護施設内で新型コロナウイルス感染症の感染者(感染疑いも含む)が発生しても、継続して介護サービスを提供することも目的とした方針です。自然災害BCPと比較して、新型コロナウイルスBCPでは以下の3点が重要になります。

  1. 正確な情報収集と的確な判断
  2. 業務継続のための人員確保
  3. 徹底した感染予防対策

介護施設内で新型コロナウイルス感染者が発生すれば、出勤できない職員が増える可能性が高くなります。一方で、職員は感染者の対処が必要になることで業務量が多くなり、結果として十分な介護サービスを提供できない恐れがあるのです。

そこで新型コロナウイルスBCPでは、上記の3つのポイントを押さえた、職員不足時でも適切な介護サービスを提供するための方針となっています。

自然災害BCP

自然災害BCPでは、台風や地震などの自然災害が発生した際も、介護サービスを提供するための方針です。自然災害はいつ発生するか予想がつかないため、事前準備が必要なのは新型コロナウイルスBCPと変わりありません。

しかし自然災害については、過去の事例からある程度の被害想定が可能なため、それに基づいて介護サービスの提供方針を決められます。

また自然災害の場合は、ライフラインへの被害が大きく、BCP策定のリスク洗い出しで十分考慮する必要があります。

新型コロナウイルスBCPのポイント

新型コロナウイルスBCP策定の際は、おもに以下の3つがポイントになります。

  1. 感染者(疑いも含む)が出た時の対応を考える
  2. 業務に優先順位をつける
  3. 感染者発生時の報告・共有先の体制を整える

次から、ぞれぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

感染者(疑いも含む)が出た時の対応を考える

介護は、利用者や家族にとって必要不可欠なサービスであり、途中で中断するわけにはいきません。そのため介護事業者は、感染者(感染疑いも含む)が出たあと、業務を中断させずにサービスを提供できるための対応を考えることが必要です。

たとえば、発熱が出て感染疑いが認められる利用者を個室に移動させる、といった対応が考えられます。このとき、BCPには「感染者用の個室を用意する」という記載をすると、感染者対策が明確になります。

感染者が出た時の対応についてBCPで定めたあとは、訓練や研修を行いましょう。平時から教育やシミュレーションも欠かさず行うことで、緊急時に強い介護施設となります。

業務に優先順位をつける

感染者が出た場合、職員が減少するため、業務に割けるリソースも限られます。そのなかで、継続してサービスを提供していかなければならないため、優先する業務を決めることがポイントです。

たとえば入所系であれば、以下のように、出勤率に応じて優先業務の基準を決められます。

  • 出勤率30%→生命を守るために必要な業務のみ
  • 出勤率50%→食事や排泄は通常通り、その他業務は縮小・中止
  • 出勤率70%→通常通り(必要に応じて一部業務を縮小・中止)
  • 出勤率90%→通常通り

このように優先業務を明確にしておくことで、感染者対応で職員が少ない場合であっても、重要な業務に絞ってサービスを提供できます。また、感染者発生時に提供できない介護サービスについては、事前に利用者やその家族に伝えておくと、有事の際もスムーズにいく可能性が高くなります。

感染者発生時の報告・共有先の体制を整える

新型コロナウイルスBCPでは、感染者発生時の連絡体制を決めておきます。感染者発生時は混乱することが予想され、前もって連絡体制を決めておくと、有事の対応もスムーズになるからです。

たとえば、感染者の連絡体制では、以下のような内容を決めておきます。

  • 全体の意思決定者
  • 感染者発生時の業務担当者
  • 関係者の連絡先(自治体や保健所など)
  • 連絡フロー など

なお、感染者発生時の連絡体制を整理するには、厚生労働省が提供しているテンプレートを活用するのがおすすめです。こちらのページの「様式ツール表」をダウンロードすると、「施設外連絡リスト」や「職員緊急連絡網」などのテンプレートを手に入れられます。便利なので、ぜひ活用してください。

自然災害BCPのポイント

自然災害BCP策定の際は、おもに以下の3つがポイントになります。

  1. 自然災害発生時の情報集約先・判断系統を整理する
  2. 「事前の対策」と「被災時の対策」の2つにわけて考える
  3. 日頃から訓練・教育を行う

自然災害発生時の情報集約先・判断系統を整理する

地震や津波などの自然災害が発生した場合、いかに迅速な情報収集ができるかが重要です。二次災害の発生も視野に入れて、日頃の研修やシミュレーションはもちろんハザードマップや被害想定の確認も必要になります

また、対応判断をどの部署がどのように行うのか、情報をどこに集約するのか系統を整理しておいたほうがいいでしょう。

「事前の対策」と「被災時の対策」の2つにわけて考える

自然災害対策をそのまま大きく捉えるのではなく「事前の対策」と「被災時の対策」の2つにわけ、それぞれ対策するのがおすすめです。

「事前の対策」としては、以下のような内容が考えられます。

  • 建物の耐震化
  • 食料や生活必需品の備蓄管理状況
  • インフラが停止した場合のバックアップ など

このように、自然災害を対策するため、今できることを洗い出します。一方で「被災時の対策」では、以下のように、発生した際にどう行動するのかを明確にします。

  • BCP発動基準
  • 安否確認の方法
  • 避難場所・避難方法
  • 職員の管理方法
  • 施設設備の復旧作業 など

どのような場面で、どのような対策を行うのか整理しておきましょう。介護施設の特徴やリスクをしっかり把握して、災害に応じた被害想定をしておくことが大切です。

また、実際に自然災害が発生した場合に適切に対応できなければ意味がないので、日頃から訓練や研修も行っていきましょう。

日頃から訓練・教育を行う

自然災害BCPに関して、日頃の訓練や教育がどれだけ行われていたかがポイントになります。近年、自然災害が増加していることもあり、日頃のBCP訓練が重視されています。

BCP訓練の種類は、おもに以下の3つです。

  • 机上訓練
  • 避難訓練
  • バックアップ訓練

机上訓練では、介護施設で策定されたBCP通りに実行できるかどうかを、計画自体に無理がないかなどを細かく話し合います。実際になにか行動しながら訓練を行うわけではありませんが、日頃から策定したBCPを意識しておくことで、自然災害が発生した場合でもチームで連携して行動できます。

避難訓練は、介護施設が利用不可能となり、移動が必要になった時に備えて行う訓練です。介護施設なので寝たきりの場合や、車椅子の場合などさまざまなケースが想定されます。その状態での避難となると不測の事態が発生する可能性も少なくないので、日頃から避難訓練を実施しておきます。

自然災害が発生した場合、人員の避難が最優先ですが「バックアップ訓練」でデータの保護を図る訓練も大切です。訓練を繰り返しながら定期的にBCPを見直して、できる限り完全なBCPに近づけていきましょう。

まとめ:令和3年度介護報酬改定に沿ったBCP運用を

令和3年度介護報酬改定におけるBCP策定義務化については、経過措置期間はあるものの早急に策定する必要があることに変わりありません。感染症や自然災害に対応できるBCP策定を行うことが求められています。

日頃の訓練と定期的なBCPの見直しを行っておくことで、いざという時にスムーズに行動できます。介護施設に合わせて、令和3年度介護報酬改定に沿ったBCP運用を実施してみてください。